岩王帝君紀行・一 1 / 4
  1. 1 岩王帝君紀行・一
  2. 2 岩王帝君紀行・二
  3. 3 岩王帝君紀行・三
  4. 4 岩王帝君紀行・四

岩王帝君紀行

岩王帝君紀行・一

璃月 これは訳文です。語義はゲーム内テキストを優先してください

月のファンタジー小説。岩王帝君が凡形に化して人間を歩いた旧事を語ります。天下の珍宝が集う時代、真偽入り混じる物語と旧夢が商港に溶け合います。

璃月は天下の奇珍が集う地。宝物があれば、おのずとそれを見極める慧眼の士がいます。

「希古居」初代店主のミングイこそ、そうした一風変わった蒐集家でした。

緋雲の丘の骨董店「希古居」には、しばしば雅客が訪れます。この店は昼は門を閉ざし、月が昇ってからだけ開きます。迎えるのは並の客ではなく、眼識すぐれた名士たちです。

フォンテーヌの精密な時計、スメールの薫香、モンド旧貴族が遺した酒壺、仙人が半刻ほど腰かけた木の腰掛け、岩王爺が一口だけ茶を味わったという玉の杯、隣国の風神がうっかり割ってしまった青磁の酒瓶……いずれも店に整然と並び、縁ある客の到来を待ちます。

その夜、一人の貴公子が店に足を止め、陳列棚の古物をじっと眺めていました。

店主は気づきます。山岩のように厳かな黒い長衣をまとい、両眼は琥珀のようだと。

この貴公子は凡人の輩ではない——ミングイは一目でわかりました。

「いらっしゃいませ。お気に召した古物がございましたら、ご自由にお選びください。」

店主の柔らかな声が、深夜の静寂を破ります。

「ん…ああ、失礼。」

貴公子は微笑み、やや困ったような口調で言いました。

「この精巧な贋物に、つい興味を惹かれまして。」

彼が目を留めたのは、欠けた古い玉牌でした。

月明かりが、模様のやや残る面に落ち、綿状のきずの影を透かし、表面の縦横に刻まれた歳月の溝を伝って流れ落ちます。摩耗は激しく縁も欠け、かつてどのような筆跡や絵があったのか、もはや判別できません。安穏ならざる時を生き抜いてきたかのようです。

「贋物…? どうしてそうおっしゃるのです。」

ミングイは客の挑みには慣れていましたが、これほど直截な嘲りには内心いらだちました。

ましてこの古物は、冒険者が深淵の廃宮の下から命がけで掘り出し、彼女が口を酸っぱくして、家財の大半を投じてようやく買い取った品。もし真に贋物なら、資産の損失のみか、「希古居」の識宝の名声も地に落ちます。

そこでミングイは密かに決めました。この場を荒らす生客を追い返すだけでなく、この玉牌をなんとか彼に売りつけるのだと。

「どうか、くわしくご評定を。」

———————————

「周知の通り、二千五百年前、テイワットの大地は災異に見舞われ、魔神たちが入り乱れて戦い、今日の凡世七国の境いずれもその波を受けました。当時に七国はなくとも、凡人には集落、城邦、国がありました…

「長い忘却のなかで名を失った魔神も、かつては民に記念され、崇拝され、愛されていました。ゆえに先民は、浜辺の珠貝、深山の軟玉、草間の頑石、地中の塩晶で、それぞれ神の像を形づくりました。

「この種の玉牌は、まさにその時代の遺物。岩王帝君を崇拝した古の部族のもの…もっとも当時、わが岩王爺はまだ岩王帝君とは呼ばれていなかったかもしれません。

「神々が凡人の頭上で殺し合う時代、岩王帝君はまだ七国の貨幣を定め、モラを創り出してはいませんでした。ゆえにその部族は、偶然掘り当てた金石を媒介とし、岩王の肖像を価値の担保としました。

「ご覧の通り…凡人の知恵はかくも神奇。岩王の手配に先立ち、自ら活路を見出したのです。」

貴公子は一息つき、いまの品評を反芻するようでした。

銀白の月が彼を覆い、その身をやや小さく見せます。

「この種の玉牌は現存が稀で、多くは山間に埋もれています。しかも凡人の手彫りゆえ一枚ごとに唯一無二…市場では天価に炒られ、価値連城と言っても過言ではありません。

「ただ惜しいことに、貴店のこの一枚は近代の模造品。年代の近さは、おそらくご尊父の世代までしか遡れないでしょう。

「業界でいう『きずなきは玉に非ず』。この枚はきずが少なく、玉質が透き通りすぎる…先民の時代の遺物には見えません。

「加えて牌に彫られた像は女性。先民の他の遺物には稀な形象です。」

貴公子は玉牌を掲げ、月光の下で細やかに眺めました。

「民間には多少の伝説があるものの、岩王帝君が女身に化したという話は、いかなる史籍にも見えず、実物の証左もありません…」

若年ながら、彼には老学究めいた気質がありました。

「それは客人のご存じないところで…」

ミングイは微笑み、経験の浅い狩人をからかう狡猾な狐のようでした。

「どうか、私の物語に耳を傾けていただけませんか。」

店主は細長い眸を細め、物語を語り始めました…

💬 コメント 0

コメント

読者の皆さんで感想を交流しよう